現代版養生訓

2026年の現代版養生訓

1月

市立病院 病理診断科 佐野 健司 医師

がんゲノム医療について

2019年から保険診療として始まったがんゲノム医療が、南信の基幹病院である飯田市立病院でも信州大学と連携して、ようやくこの4月から始まっています。がんゲノム医療とは簡単に言いますと、各個人のがんの遺伝子変異に合わせた治療薬の選択が可能になりうるということです。生検や手術で採取した病理検体や血液を使用して、多数の遺伝子変異を、腫瘍内の組織や細胞、または血液から次世代シークエンス法という方法で同定して、変異を探索します。この変異に適合する分子標的薬を投与することで、効率的に癌の治療が目指せるとともに副作用が少ないという治療です。
がんゲノム医療を理解するため、がんはなぜ発生するのかということを知ることがまず重要です。我々の体を構成している組織のさらに小さな細胞単位の中に位置する核内に、ゲノムという細胞の設計図である遺伝子が存在します。がんはこの遺伝子に複数変異を生じることによって発生します。その中で細胞の増殖を促進する遺伝子であるがん遺伝子と細胞の増殖にブレーキをかける遺伝子であるがん抑制遺伝子ががんの発生に深く関係しています。これらの遺伝子を同定することで、この遺伝子の産物である蛋白を標的に治療薬として使用することで、細胞の増殖を制御することが可能になります。
がんの予防という観点で、なぜ変異が生じるのかということを知っておくことも重要ですが、残念ながら充分に分かっていません。しかしいくつかの腫瘍ではわかっているものがあります。その代表はパピローマウイルスなどのウイルス感染です。子宮頚部がんや咽頭がんなどがその例です。これに対してはワクチンが大きな効果を発揮します。
その他変異を引き起こすものとして、たばことアルコールになります。たばこでは肺がんや食道がん、アルコールではやはり食道がんなどの消化管のがんの変異を誘導するとされています。