乳腺内分泌外科

乳腺内分泌外科のご案内

特色 ・ 対象疾患 ・ 診療実績

乳腺外科

 乳腺外科で取り扱うのは、大部分が乳癌の治療です。近年、乳癌患者は著しく増加しており、女性の9人に1人が乳癌になるといわれています。乳癌の治療法は、画像診断の発達や、新薬の開発などにより、以前とくらべ著しく変化してきています。今や早期乳癌に対する手術方法としては、乳房温存療法が標準術式となっています。当科では1989年より早期乳癌に対して乳房温存療法を開始し、その割合は年々増加していましたが、後に述べる再建手術の普及により、ここ数年は減少傾向にあります。腋窩リンパ節郭清の省略を目的としたセンチネルリンパ節生検は2004年より開始し、昨年は初発乳癌109例中69例(63.3%)に施行しました。2015年よりセンチネルリンパ節への転移の有無の診断は、従来の術中迅速病理診断から、転移したリンパ節で高度に発現するサイトケラチン19mRNA を検出するOSNA 法に変更しました。最近5年間の当科における乳癌手術の内訳を表1に示します。形成外科の協力により、乳房切除後の乳房再建手術も患者の希望に応じて行っています。これまで人工乳房を用いる再建手術は自費診療となっていましたが、2013年7月にゲル充填人工乳房(ブレストインプラント)による乳癌術後の乳房再建手術が保険適用となり、加えて乳房再建用皮膚拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)も保険適用となりました。しかし、保険適用の対象となるためにはいくつかの制約があり、実施施設認定を受けた医療機関のみ
でしか保険適用の乳房再建手術を受けることはできません。当院は2013年8月に施設認定を受けています。それ以降、乳癌手術(全摘)と同時にエキスパンダーを挿入し、二期的にインプラントに入れ替える乳房再建手術の件数が増加しています。
 マンモグラフィ検診の普及に伴い、腫瘤を形成しない微細石灰化病変の精査目的で受診される患者さんが増えてきました。当科では2004年よりマンモトーム生検を導入して、そのような患者さんに対応しております。マンモトーム生検とはマンモグラフィや超音波診断装置で病変を確認しながら針を差し入れ、針の側面にある吸引口から組織を採取する診断システムです。年間10例程度行っており、その内の約2~3割に早期乳癌(stage0~1)が見つかっています。
 乳癌の治療は手術だけでは完結しません。再発予防の治療として、薬物療法あるいは放射線療法が必要になることがほとんどです。薬物療法は癌組織に発現するホルモン受容体やHER2( 癌細胞の増殖に関与するタンパク質)などを調べ、その患者さんに最も効果的と考えられる薬剤を選択します。場合によっては、手術の前に薬物療法を行うこともあります。
 手術、薬物療法( 再発予防、再発に対する)、放射線療法などの治療方針は、原則として日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」に従って決めています。

内分泌外科

 内分泌外科で取り扱うのは甲状腺疾患がほとんどです。甲状腺疾患の手術対象としては、おもに甲状腺癌ですが(表2)、良性結節性病変でも、腫瘤が大きく頚部の圧迫症状がみられる症例や、充実性腫瘤で癌との鑑別診断が困難な症例(濾胞性腫瘍)は手術適応としています。バセドウ病の治療に関しては、原則的には薬物療法が中心ですが、抗甲状腺剤が副作用などで服用困難な症例、抗甲状腺剤に抵抗性があり再燃を繰り返す症例、眼症状が強くまた甲状腺腫が大きい症例および癌合併例などは手術適応としております。その他、症例数は少ないですが、副甲状腺疾患(原発性および続発性副甲状腺機能亢進症)、副腎疾患(副腎皮質腺腫など)の手術も行っています。

表1 最近5年間の乳房癌手術症例数
 
乳癌総手術数
温存手術例(%)
センチネルリンパ節生検施行例(%)
2017
97
38(39.2)
63(64.9)
2018
60
28(46.7)
37(61.7)
2019
92
43(46.7)
55(59.8)
2020
93
34(36.6)
57(61.2)
2021 109 55(50.5) 69(63.3)

 

表2 最近5年間の甲状腺癌手術症例数
 
甲状腺がん手術症例数
2017 13
2018 11
2019 18
2020
15
2021 9

担当医師のご紹介

  • 新宮 聖士 シングウ キヨシ
    役職
    副院長
    副経営企画部長
    副地域医療部長
    がん診療・緩和ケアセンター長
    外科部長
    乳腺内分泌外科部長
    卒業年
    昭和62年
    専門領域
    内分泌外科(乳腺、甲状腺疾患)
    専門医等
    日本乳癌学会乳腺指導医・専門医
    日本外科学会指導医・専門医
    日本臨床腫瘍学会指導医・がん薬物療法専門医
    日本甲状腺学会専門医
    がん治療認定医機構がん治療認定医・暫定教育医
    日本内分泌外科学会内分泌・甲状腺外科指導医・専門医
    日本消化器外科認定医
    所属学会
    日本外科学会
    日本乳癌学会
    日本消化器外科学会
    日本臨床外科学会(評議員)
    日本内分泌外科学会(評議員)
    日本緩和医療学会
    万国外科学会(active member)
    日本内分泌学会(評議員)
    日本乳癌学会中部地方会(世話人)他
    一言
    患者さん個々に応じた最良の医療を提供できるよう努力します。