病院からのお知らせ

東日本大震災医療救護班石巻報告

2011.03.28

救護班石巻報告 

長野県救護班第4班として石巻へ出動した、飯田市立病院隊(神頭定彦救命救急センター長、丹羽智宏医師、宮澤佳奈子看護師、下井早苗看護師、中嶋 勝薬剤師、川上善久薬剤師)は、3/27.7時に無事に帰院しました。

神頭定彦救命救急センター長よりの活動報告 
【1日目】
病院支援として、外部からの救護班のみで、緑・黄エリアで赤以外の受診者をすべて(330-340人/日)診ます。3/25の日勤帯は、国立長野、飯山日赤、東京チームで136人、準夜帯で(17-24時)は、飯田(外科、内科)、県立阿南(泌尿器科)、富山日赤(小児科、研修医)で80人で、印象では外科系、小児科は書く10数人で、内科系が主体でした。富山日赤の師長さんがトリアージナースとしてうまく回し、患者さんが持参する薬も薬手帳が流され分からないものが多いのですが、薬剤師さんが3人いて大変助かりました。電子カルテは、IDのある患者の過去受診記録の閲覧と、全患者の血液、画像のオーダーリングのみで、他はすべて紙運用でした。血液検査は、災害緊急用の凝固ありとなしが基本指定で、造影CTは造影中医師同席が必要です。準夜、深夜帯は、注射薬と処方薬が指定されていました。同エリアは、応急処置後帰宅が原則です。通常救急では入院を要する患者さんが8名ほどいました。中には、腎盂炎で39℃の高熱の方や、尿病性腎症で1週間インスリンが津波で流され使用せず食事もほとんど取れず全身の震えで来院の方、気管支拡張症の喀血・血痰という方がおられました。応急処置後入院させたかったのですが、病院状況により全員帰宅してもらわざるを得ませんでした。

【2日目】
長野県全隊が避難所救護所活動で、飯田隊は、海に近く津波で1階まで水没した地区の渡波(わたのは)小学校を担当しました。
ライフラインは電気のみ、水道、ガスはなく、携帯も普通で、2階以上の全教室に1000-1200が避難していました。環境は、雪の吹きすさぶ中暖房ない過酷なもので、トイレはプールの水を当番で汲み上げ流しているが、下水の容量の問題で紙は流せず各個室のビニール袋に収集。
手指消毒剤はあるが、給水が不十分で飲料水優先で、イソジンガーグルは豊富でもうがいが出来ない状態でした。
飯田隊の医師2名、看護師2名、薬剤師2名に、千葉から個人支援で来られた医師で、約120名の診療をしました。看護師2名で問診、バイタル測定、トリアージののち、医師3人で診療、薬剤師2名で投薬、ロジスティック分担で、効率よく流れ、薬剤師さん2名の意義は大きかったです。約半数は呼吸器疾患で、PL顆粒など短期間薬剤は持参薬を処方しました。
厳しい環境下、この避難所自主運営組織の感染予防対策が優れており、インフルエンザ、感染性胃腸炎、精神的不安定な方はいませんでした。
深部静脈血栓も現在石巻圏避難民の0.6%に見られていますが、今回はいないようでした。下肢腫脹、疼痛の患者さんは、配布された男性ストッキングを渡し、石巻日赤の循環器科での診察を勧めることになっています。

慢性薬は、2枚つづりの石巻日赤処方箋に30日分を処方し、写しを患者さんに渡し、1枚目を帰ってから日赤の薬剤科へ渡します。日赤薬剤科で、調剤し翌々日ぐらいまでに避難所へ届けてくれるシステムになっています。日赤薬剤科は全救護所からの処方を連日深夜2時くらいまでかかって不眠不休で調剤してくれていました。

不足物品は、避難所、救護所ごとに全く異なります。比較的潤沢なところもあれば、すべてが不足しているところもあります。多めに持って行って、余った分は持ち帰るというスタンスが基本です。

渡波(わたのは)小学校は、感染症の患者さんも少ないようで、医療物品は比較的充足していました。渡波小学校避難所としての不足物品は、緊急で必要なものは、下着(男女)と生理用品とのことでした。本部にも伝えましたが、次回派遣する隊は是非、渡波(わたのは)小学校へ下着(男女)と生理用品を届けていただきたいと思います。長野県担当ブロックの大街道の東に位置し、石巻日赤からは30分ほどの距離です。
海に近く携帯不通の渡波(わたのは)小学校での安全確保は、地震を感じたら携帯ラジオか衛生携帯による自院からの情報で津波警報をキャッチし、警報が出たら直ちに最上階以上に避難する方針でよいと思います。道路環境が悪く車ではとても逃げられません。大街道地区も同様と思いますので、携帯物品の参考にしてください。

【全体】
まず、組織ですが、石巻圏の医療を統括しているのが「石巻圏合同救護チーム」で本部が石巻日赤に置かれています。石巻日赤は赤対応と全体の指揮、医療基盤を担い、全国からの救護班が日赤での黄・緑と救護所活動を担っています。石巻に入っている救護班は全部で50-60チーム。
院内活動は暖かですが、救護所はかなり寒いです。こうした劣悪な活動で、我々は無事でしたが、他の病院班では、発熱・下痢・嘔吐など体調不良になられる方も発生してしまいました。

カルテ、処方箋は、病院、救護所ともにすべて石巻日赤の紙カルテです。福島経由の経路、石巻での活動、全工程を通し通常範囲内で全く心配いりません。毎朝の本部ミーティングでも放射線測定値が発表されますが、通常値です。この発表は、我々が風評被害に陥り不安なく活動するための科学的根拠で、とても重要と思います。車は、現地に県の車が3台(飯田の乗ったセレナはカーナビなし)ありますが、飯山日赤さんの救急車が大活躍でした。道路では、信号は作動せず、段差のあるところもあり、運転に注意してください。ゴミは、すべて自院まで持ち帰ります。院内の自動販売機は、稼動しているものもありますが、使わないようにしましょう。衛生携帯電話の他、携帯カーナビ持参が望ましいです。